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2014年8月3日日曜日

年金130兆円の投資リスクを理解するために「GPIF 世界最大の機関投資家」をレビューを読んで購入してみる

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「GPIF 世界最大の機関投資家」を購入してみることにする。

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GPIF 世界最大の機関投資家
小幡 績
東洋経済新報社
売り上げランキング: 5,086

商品の説明
内容紹介
危うし、年金財政。130兆円の運用資産改革はアベノミクスの救世主にはならない。
2014年4月までGPIFの運用委員を務めていた著者が、知られざる世界最大の機関投資家の全容と、
あるべきGPIF改革について説く、緊急提言の書。

安倍政権が株価引き上げのネタとしてGPIF改革を利用したかどうかは議論しません。そんなことはどうでもいいのです。大事なことは、GPIFというものの存在を、国民が突然意識したのですが、それが何かもどのようなものかもまったく知らない。そして、政権はそのGPIFを大きく変えようとしている。しかも、まさにいますぐに、です。これは危険です。私は4月22日までGPIFの運用委員というものをやっていました。運用委員を運良く退任して、ある分野の守秘義務は依然あるものの、自由に記述できる立場にある私が、いまできることは、GPIFの理解を少しでも幅広く多くの人と共有することだと思うのです。したがって、理解が浅く、誤りもあるかもしれませんが、とにもかくにも、全力でこの本を緊急出版することにしたのです。 (「まえがき」より抜粋)
内容(「BOOK」データベースより)
危うし、年金財政。130兆円の運用資産改革は、アベノミクスの救世主か破綻の始まりか?

レビュー

13 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0 安全かつ効率的な公的年金運用の崩壊危機に警鐘 2014/7/11
By 芝崎翠
形式:単行本
 「約130兆円の安全かつ効率的な公的年金の運用が危機にさらされている」--。こう筆者は警鐘を鳴らす。公的年金は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF、ジー・ピー・アイ・エフ)と呼ばれる厚生労働省所管の独法が運用している。安倍晋三首相によるアベノミクスの成長戦略の柱にGPIF改革が盛り込まれ、GPIFの運用ポートフォリオを速やかに変え、組織改革の断行が求められているのだ。
 
 本書は、「GPIFとは何か」という点から、「リスクとは何か」など17章建てで、GPIFや公的年金、運用のことをよくわからない人向けにわかりやすく解説。現在進行中のGPIF改革に対する見解も示している。そして最終章で「GPIF改革私案」を提示してまとめたものだ。ただやはり専門性が強いので、一定の知識のない人には難解な面もある。

 筆者の小幡績氏は財務省のキャリア官僚から慶大准教授に転じ、GPIFの運用委員会委員を2期4年務め、この4月退任した。現在の金融マクロ政策に批判的な立場でもある。これまで内部からGPIFを眺めていた筆者が、現在進行中の政府のGPIF改革案を批判している。ただ退任した運用委員の多くがだんまりの中で、筆者は現政権が大した議論もせず、国民の知らないまま、GPIFを変えようとしていることに危機感を持ち、本書を書き上げた勇気は評価できよう。
 
 政府の進めるGPIF改革は大きく、国内債券から国内株式へのシフトなど資産配分の見直し、ガバナンスの見直しの2つに大別される。筆者は本書の随所でそれらに対して独自の視点で批判する。例えば、国内債券から株式へのシフトについては、「リーマンショック後、世界の投資家はすでに機敏に動いて株価が上昇してしまった。株式を今更買うのは間抜けだし、危険」と独自の相場観も披露する。また、筆者はGPIFの運用で最も重要なのは、「国民のリスク許容度」と指摘する。「国民はこれまで年金運用の哲学を考えたこともない。どこまでリスクをとれるか意思決定することが必要。これは専門家が国民に伝えること」と官僚らしい発想が垣間見れる。

 最大の読み所は、最終章の私案に尽きる。現在の投資対象資産別に5区分している運用ポートフォリオを、ある種の投資の考え方(目的別といってもいい)に基づくポートフォリオに組み替えることを提言している。具体的にはキャッシュマネジメント対応部分(30%、投資対象は国内債券)、インカムゲイン戦略(40%、同グローバル債券、不動産、インフラなど)、キャピタルゲイン戦略(20%、同グローバル株式やプライベートエクイティなど)、オルタナティブ戦略(10%、同その他)。持ちきりでインカム狙いとし、時価を無視して価格変動リスクなどから自由になれるメリットを最大限生かしてリターンを稼げる一例だという。もちろん、これまでとの比較可能性などの観点から、即座の実現は難しい。しかし、企業年金では一般的な発想で、GPIFが今後ポートフォリオを変える場合には一考に値する。
 
 ガバナンス改革についても、筆者は常勤の運用委員の登用や理事会の設置など政府の改革案に否定的だ。優秀な人材を外部から登用するのは難しいためで、じっくり内部で育成するしかないという。理事長以下の内部幹部5人を理事にし、運用委員会を最高意思決定機関にパワーアップさせることを提案。そのためには理事長ら幹部や運用委員の政治からの独立性を確保することが最大の課題としている。

 筆者は今年4月に自ら含め運用委員の多くが刷新された点に触れ、交代になった委員のほぼ全員が改革派だったと明かし、4年間精力的な議論の蓄積を台無しにしたと指摘。新任の委員が数か月で充実する議論をすることはできないだろうと皮肉る。

 評者は、筆者のこれまでのGPIF運用委員での生々しいやり取りの一部を記録しているものと期待していたが、そうしたものはほとんど皆無だった。あくまで公表情報について筆者の見解を記述したものだ。続編に期待したい。

 生々しさでいれば、2006年3月まで6年間にわたりGPIFの前身の年金資金運用基金投資専門委員だった寺田徳氏(MSCI特別顧問)が事務方の根回しで異論や反対論が抑え込まれてしまうケースは少なくなかったと述懐していたのを思い出す。寺田氏は基本ポートフォリオの決め方が間違っている、発言者を匿名で、運用委員会の議事録要旨を公開している点などの問題点を指摘。「運用のプロではなく、前例踏襲主義の役人で、彼らの優先事項は組織の利益であって、受益者の国民の利益を守るという発想がそもそもない。運用の専門家として能力がないのは明らか」などと痛切に批判していた。寺田氏は「年金情報」という専門誌で数回にわたり寄稿していたので、関心がある方はそちらを参照されたい。
7 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 巨額すぎるがゆえのジレンマ 2014/7/13
By ebith
形式:単行本
GPIFが抱えるジレンマ、それは運用資金があまりに巨額すぎることだろう。
130兆円を以下にハンドルするか、これは金額が大きすぎて「面白み」が無いのではないだろうかと勘ぐってしまう。

利率の低い国債が60%、その他国内、海外株式等が40%。前者については、リターンの振れ幅が小さく、運用見通しが立てやすい。一方、後者の株式その他については、経済情勢非常に関連性が高く、リターンの振れ幅は大きく変化する。運用益は、国民への年金支給に利用されることを考えると、安定投資の割合を高くするに越したことはない。だが、口うるさい国民は「はい、そうですね」とは納得してくれない。より投資リターンが見込める商品の運用を通じて、好成績をあげろと言う。

もっとも、運用そのものは、ファンドの選択にしか関与しないわけで、ある意味投資素人の集団ではないかと言われても仕方が無いかもしれない。ファンドを通じた取引による規模のメリット云々述べられている。が、正直、個人で株式等の取引経験がある人にとっては、ピントが外れた意見とも映りかねない。売買に必要な手数料は昔と比べて極めて安いのが現在の世界だ(投信は別物だが)。
※運用資産10億円程度であれば、スキニーな個人が運用した方が高いリターンを得られるのではないだろうか。

説明責任のところで色々と愚痴を述べられているが、その内容は無味乾燥にすぎる。実質的な外のファンドに丸投げしている以上、説明責任はまぬがれない。だが、説明の方法、仕方にはテクニックもあろう。上手く国民を誘導すること(悪く言うと欺くこと)もまた、重要なのではないだろうか。

最後に・・・
書籍フラッシュボーイズのように、HFTのトレードを好ましくないと考える層も出てきている。新しい投資市場を作っても良いのではないでしょうか。もちろん、国がメインとなってそれを創ることは難しいだろうけれども。
あと、何れにせよ年金制度は変えないと、どんどん厄介さが増していきます。段階的に、制度を消滅させるような方策は避けられないのでは。若手の中には、年金を「寄付」と考えている人もおり、もはや体をなす制度では無くなってしまったように思いますが、さて皆様は如何とおもいでしょうか。

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